作家No.5 村田香月
Q1 今回の作品テーマはなんですか?
私は悩みや不安を感じた時に、いつも自然のことを考えます。
人間の力がいくら強くなっても、どれだけ複雑な社会を作り上げたとしても、自然の持つ圧倒的な大きさの前では、そんなものは本当にささやかなものでしかない。
自分というひとりの人間が、この世界に及ぼす影響など、ほとんどないに等しいようなものです。
以前読んだ小説に、「身動きが取れないほどの圧倒的な運命」というフレーズが出てきて、とても印象に残っているのですが、私の中ではこのフレーズが、まさに自然のイメージそのものでした。(その小説の中では、全然意味合いは違いましたが)
自分の力ではどうしようもできない、寂しさも孤独も、大きな自然、圧倒的な運命の前では、なんて小さなものなのだろう。
そう思えることが、私にとっては救いになっています。
今回の作品は、そういった考えや心の中のイメージのようなものを、風景画として描きました。
自然の中にひっそりと在る、人工物のモチーフは、同じように小さく存在している、自分自身の象徴です。
Q2 作品制作のなかで大切にしていることはなんですか?
テーマとはあまり関係のない具体的なことなのですが、「制作に入るまでの壁をなるべく低くすること」です。
面倒くさがりな性格なので、絵の具が乾くのを待ったり、パレットを毎回洗ったり、こまめに筆の手入れをしたりといったことを、どうしても億劫に感じてしまいます。
そういったことが制作意欲の妨げとならないように、使う画材や道具を工夫して、なるべく面倒なことを遠ざけるようにしています。
Q3 創作意欲の源(きっかけになるもの)はなんですか?もしくはどんな時ですか?
本を読んだり、音楽を聴いたりして感情が動かされた時が、いちばん創作意欲がわくような気がします。そしてそういう時は、だいたい夜です。
Q4 今回の作品制作で苦労した事、工夫したことはなんですか?
いつもそうですが、テーマや描くものを決めるまでが一番大変です。
連作として何かしらの共通点や統一感を持たせたかったので、全部の方向性を完全に決めてからでないと作業に入れなかったのもしんどかったです。
描いている時は楽しいのですが、考えたりラフを作ったりする時間はあまり好きではないので…(笑)
Q5 作品の見どころを教えてください。
私は自分の作品の、絵の具の質感を残したざらざらした表情が好きなので、そこを観ていただけたら嬉しいです。
Q6 これから挑戦してみたい表現、ジャンルがあれば教えてください!
いつかまた絵本を制作してみたいです。画集やカレンダーも、いずれまた作ってみたいと思っています。
画集は、絵を描いてそれに何かひとこと言葉を添えるようなもの。カレンダーは、前にスイーツ縛りで作ったので、今度は風景とか植物とかを描いてみたいです。
テーマを決めて、何枚か連作のようなものを描くのが好きなのかもしれません。
Q7 最後にひとこと
昔は気分が落ち込んだり、ネガティブな感情を持つことを悪いことだと思っていて、無理に前を向こうとしてもできないし、作り笑いや愛想笑いもしんどくて、そんな自分のことを好きになれませんでした。
それでも月日が経ち、そんな感情を持つことも、ポジティブにはなりきれない自分のことも、少しずつ受け入れられるようになりました。むしろそういった感情が、創作意欲の源になったりもして、「ネガティブな感情を持つこと」をポジティブに捉えられるようになった気がします。
「点の展」で集まったメンバーは、全員が高校の同級生ですが、そんな高校時代からも、そろそろ十年が経とうとしています。
少しずつ積み重ねた感情の変化を受け入れることは、同じく積み重ねた時間を大切に思うことと、つながっていると思います。
時の流れの早さに慄くこともありますが、それでもそれは、確かに自分が生きた時間であると、愛おしく思えるようになりたいです。